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IN ROCK
Rick Springfield がやってきた!
−−まず、ちょっと私の疑問に思っていることを訊かせてくださいね。今迄、私はあなたの曲ってポップで踊り易い曲が中心だと思って多んですが、“タオ”では、ずいぶん感じが変わって、ショックだったんですよ。
リック:そう?(と、ゆったり笑う)別にそう意識したわけじゃないけどね。ボクは最高の曲を書きたい、それしか気にしてないんだ。それに将来どうなるってことも言えないな。なぜって、今現在のことで頭がいっぱいだからさ。
−−それじゃ、“タオ”は冒険すぎたって言う人も居るけど、あなたは特にそう思っていないの?
リック:思ってないよ。それに、ボクは他人に何を言われても気にしないんだ。自分で楽しむのが先決だし、そのために曲を書いているんだからね。
−−コンサートでね、“マイ・ファーザーズ・チェア”を歌った時,何かドキッとしました・・・。
リック:あれはネ、ボクの父のことを歌った曲なんだ。父を亡くしてからというもの、いつも頭の中にかれのことがあって、それがあの曲になったんだよ。
−−だから、私達にもそれが伝わってくるんですね。今、どんな音楽を聴いているんですか?
リック:何でも聴くよ。う〜ん、ほとんどがクラシックかな。特にベートーベンやショパンが好きなんだ。
−−好きなロックバンドってないの?
リック:いろんな曲が好きで聴いてるけど、バンドをアイドル化しなくなってから、バンドにはこだわらなくなったね。
−−アイドル化?
リック:そう。子供の頃は、好きなスターができると、髪とか服装とか、何でもマネしたりして、スターを崇拝しちゃうだろう?だけど年齢を重ねてくるとバンドにこだわるんじゃなくて、純粋に音楽が好きになるんだ。
−−次に・・・(質問する方がてれるので、リックも照れる)ぐふぐふ・・・え〜っと、ズバリ、体について訊きたいんですが・・・
リック:(ぷーっと吹き出しそうになる)体!?(笑)
−−あなたの魅力は、もちろん音楽ですけど、パフォーマーとして、その体のすばらしさは見逃せないと思うんです・・・(リックの表情を実に見せたいっ!)例えばロンドン公演でも、満員の女性客の中には、失神寸前の人も続出したそうじゃありませんか。セクシーと言われる気分って、どんなものですか?
リック:あまり日本の女の子にセクシーと言われたことはないんでね・・・。(エヘエヘてれる)
−−あらっ、セクシーに国境はありませんっ!(笑)
リック:(てれてるせいか、実に歯切れが悪い。)ああ・・・あまり自分では・・・。誰でもそうだけど、自分ではあまりそんな風に考えないものだからね。びっくりしちゃうな。
−−キープ・フィットするために、体にいいこと何かしてますか?
リック:9年間欠かさずジョギングをやってたよ。今は、代わりに水泳をしてるんだ。
−−毎日?
リック:ほぼ毎日。週5日か6日。たいてい30分ぐらい泳いでるんだ。
−−ツアーの時はどうしてる?
リック:アメリカでは、必ずプールのある所に泊まるようにしてるんだ。まぁ、どうしてもなければガマンしちゃうがね。
−−意外なんですが、あなたはお肉を食べない菜食主義者なんですって?
リック:魚は食べるよ。
−−どうして野菜と魚だけで、エネルギッシュになれるの?
リック:それはね、肉は決してエネルギーを作るわけじゃないからさ。肉を食べれば健康になれるっていうのは、常識のウソだね。たんぱく質が筋肉を作るし、最高のたんぱく質は植物性なんだ。エネルギーはバランスの良い食生活から生まれるのさ。ボクも昔はいつも肉類を食べてたけど、今の方がずっとエネルギッシュだね。
−−いつから菜食主義に転向したんですか?
リック:8年前さ。当時アメリカ全土で、肉食は悪だという思想が広がってね。ボクもそれに巻き込まれてしまったんだ。それ以来ずっと菜食を通しているよ。
−−リックって健康に気を使っているんですね。?
リック:ああ。やりたいことはいっぱいあるし、そのためにも長生きしたいからね。(笑)
<中略>
−−ところで、息子さんが生まれたそうで、おめでとう。
リック:10月だったよ。リアム(LIAM)って名付けたんだ。
−−特にその名前を選んだ理由ってあるかしら?
リック:別に、音の響きが好きで・・・。
−−それだけ?
リック:そうだよ。そうゆうのってない?君はどんな名前が好きなんだい?
−−別に・・・(リックに正直に言うように迫られてドキドキ)え〜っと、“リック”が好きっ!
リック:(ぶわーっはっはっと吹き出す)リアムっていうのは、ウィリアムを縮めた名前で、変わってるから好きなんだ。
−−子供を持つってどんな気分?
リック:とても、とても、いっぱいの気持ちが交差してる感じだね。(・・・子供の顔を思い出すようにハッピーな表情で黙り込む)楽しみだし、深い愛情を感じるね。自分が正しいことをやってるか、子供に対して悪いことをしてないか、考えてしまったりして・・・慎重にならざるを得ないね。
−−自分が変わったと思いますか?
リック:感じるね。責任が大きいし、父親の役割とかも・・・ね。思ってたよりずーっと大変だ。
−−父親って、どんなものかしらね。
リック:父親のイメージは、ボクにとって自分の父親のイメージと重なるね。あの人の存在から、父とは何たるかを学んだような気がするし、彼のようになりたいね・・・もちろん難しいものだがね。
−−何人くらい子供は欲しい。?
リック:まだ父親になったばっかりだからなぁ。(笑)3人、2〜3人は欲しいね。女の子もいいな。
−−特に女性に人気があるわけで、結婚し父親になるには勇気が必要だったんじゃないですか?
リック:ボクとしては、女性ファンが音楽も気に入っててくれるのを望みたいね。
−−もちろん。
リック:もしね、女性ファンがボクを恋人としてしか評価してくれないなんて考えたくないんだ。すなわち、自分自身をバカにしているようなものだからね。もし、現実にそういう評価しか受けられないようなら、ボクはミュージシャン失格だ。ニセモノでしかないんだ。・・・別にアイドルになりたかったわけじゃないし、それならファッション・モデルでもなってたと思うよ。だけど、ボクは音楽が好きで、これしかやりたくない!必死の気分でミュージシャンになったんだ。今回日本へ来てとてもうれしかったのはね、ファンが子供の誕生日を喜んでくれて、カードやらプレゼントやら、いっぱいくれたことなんだ。(思わず顔がゆるむリック)
−−どんなプレゼントをもらいました?
リック:(アハハと軽く笑い声をたてて)子供用の小さなジャケットとかね。いつまでも純真無垢のままでいられるわけじゃない、ファンの女の子だっていずれ恋人ができ、結婚し、そしていつか子供を育てていくんだから。ファンはみんな音楽を通してボクを好きになってくれてると思うけど、やはり、ボクの結婚とかにショックを受けて、離れていってしまう人も、何人かは居ると思う・・・それでもボクはボクの人生を歩いていかなくちゃならないんだ。
<後略>
IN ROCK 1986年4月号より抜粋。
インタビュー:TOSHIKO SUZUKI
写真:WATARU ASANUMA (上1・2,中)
M.KUWAMOTO(下)
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